今宵、月の照らす街で
未知の特異点と、200年ぶりに観測される霊圧。


それだけが観測されただけで、対策室は慌ただしく動き出していた。


「室長!政都大病院から二つの観測値がロスト!紘子の波形もロストしました!」


その報告に対して、やるべき事、果たすべき事が自然と多香子の頭に浮かぶ。


思っている以上に冷静になれているのかも知れない、と、多香子は自分を評価する。


それでも、今まで耳に当てていた受話器を叩き付けるように戻したのを見て、本当の自分は偽れないのだと感じた。


「今、千鶴に連絡したわ。彼女を病院に向かわせます。あずさちゃん…八龍を揃えます」


―――八龍。


小龍沢家当主ですら悩む程の強大な力。


だけど、もう悩む事は出来ない。


年が明けてからで事態は悪化しているのは、間違いない。だからこそ、それを止める力が必要だった。


「凪家、如月家、春日家は除いて構わないわ」


その言葉に、あずさは黙って頷いて非常コードを叩いた。


「螢[ホタル]、霞[カスミ]、鏨[タガネ]、梔[クチナシ]、壥[ヤシキ]に緊急召集!!繰り返す…!」
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