今宵、月の照らす街で
「陰陽の逆転?」
「世界を闇に、とか…?」
「馬鹿な、陰にそんな知能が?」


様々な憶測が飛び交い始める。


「最後に…小龍沢の…須佐之男の血を求めている事」


ざわつく中で敢えて続けた言葉に対策室が静まる。


「嵐神にして荒ぶる神の血、か…今までの歴史でもいたけど、まだいるんだ」


「明奈さん?」


明奈は呼び掛けに答えずに一歩前に出る。


「千鶴?私はこのコを護るわ。私の大切な弟子だもの」


千鶴と明奈の間で沈黙のやり取りが行われている…らしい。


千鶴は溜息をついて頷いた。


「八龍筆頭としてお願いするわ」


その言葉に明奈は微笑んで千鶴に背を向けた。


「ありがと。室長、今日はお休み頂くわ」


人混みが自然と師匠の行く道を開く。


「明奈さん!」


成二の呼び掛けに反応して、明奈は脚を止めた。


「何処へ?まだ会議は…」


すべてを言い終えないうちに、明奈は悲しげな顔で振り向く。


一瞬、成二には何があったのかわからなかった。


そして…何故そう感じたのかわからないが…今までに見た事がない程、明奈は綺麗な表情を浮かべていた。


「ごめんね、また後でね」
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