涙の欠片
第五章−暗涙−
冷たい風が吹き付ける冬。
何もない平凡な日々を過ごしていたけれど、あたしの心は不安を感じ始めていた。
退院してから、あたしはリュウと身体を重ね合うことすらまったくなく、リュウもあたしの身体の事を思ってか求めてくる事は一切なかった。
だから、それがあたしの不安を導き始めていた。
12月に入った頃から、またリュウの携帯が気になり始めていた。
何回もなる電話にため息をつきながら携帯を切るリュウ。
その電話に出てるのかは、あたしは知らない。あたしと居る時は絶対に出ない。
そんなリュウの姿に今まで何も言わなかったけれど、不安が増してくるたびに怖くなっていて冬休みに入ってすぐリュウの部屋にいた時、あたしは問い詰めた。
「ねぇ…、いい加減にしてほしいんだけど」
「何が?」
「電話。いつもリュウが出ないのって女でしょ?」
リュウは深く息を吐きタバコに火を点ける。
吐き出した煙をジッと見るだけでリュウは口を開こうとはしない。
そんなリュウの態度にあたしはイラッとした。