涙の欠片
−涙の欠片−愛蔵−

「リュウ!!」


あたしは校門の前で車を停めて立っているリュウの所まで駆け付けた。

一緒にいた時、何度も見せてくれた優しい瞳でこっちを見ているリュウの胸にあたしは飛び込んだ。


「リュウ…」

「おめでとう」


そう言ってリュウは強くあたしを抱き締める。

そのリュウの温かい体温に触れた途端、涙が込み上げてきた。


「もう…、もう来てくれないと思ってた」

「恵梨菜の事、忘れた事なんてねぇって言っただろ」

「だって…」


擦れた声で啜り泣くあたしの後頭部に手を添え、リュウは優しく撫でる。


「遅くなってゴメン…。恵梨菜が卒業するまで待ってた。その時間が欲しかった」


そう言ってリュウはあたしの身体を離してポケットから何かを取り出し、あたしの手の平にポンっと銀色に光る物を置いた。



…―――鍵。


銀色に光る鍵。


< 350 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop