涙の欠片

「前の部屋引き払ったから新しい部屋の鍵。恵梨菜の鍵。……俺と一緒に住んでほしい」

「リュウ働いてたの?」

「あぁ。俺のケジメ…。嫌な思いいっぱいさせたし、恵梨菜と住みたかったから…、だから恵梨菜の卒業まで待ちたかった」

「リュウ…、ありがとう」


鍵をジッと見つめるあたしをリュウは引き付けギュッと抱き締める。

あたしの視界はリュウの胸で一杯になり、リュウの温もりで包まれていく。


「やっぱ恵梨菜しかいねぇわ」

「あたしもリュウしか居ない。リュウじゃなきゃ嫌だ…」

「もう…、俺から離れんなよ」

「うん…。当たり前…」



リュウはフッと笑い、


「愛してる――…」


そう優しく耳元で囁いた。



きっと、これからも絶やす事なくあたしの目を通して涙は落ちていくだろう。





【完】


−2009. 3. 1−


< 351 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop