涙の終りに ~my first love~
変わりえぬ愛
想い出にひたりながら渋滞を潜り抜け、
数年ぶりに彼女の家の前までやって来るとオレは我が目を疑った。

道路脇に車を止め外に出ると真子の家があったはずの場所は冷たいアスファルトに変わっており、片側二車線の見通しの良い道路になっていた。

何度も自転車で通った場所だから間違うはずもないし、ここは土地勘もある。

愕然としながらその場に立っているとすぐに謎は解けた。
区画整理という名のもと道路の拡張と整備が進み、
オレの家も取り壊されて少し離れた場所に移り住んでいた。
だから時期こそ違えど同じ流れに流され真子もどこかに移って行ってしまったのだ。

新しく整備された道路を勢いよく通り過ぎる車を見ていると、
真子がとてつもなく遠い所に行ってしまった気がしてもう二度と逢えないような気持ちになった。
当時は指先で覚えていた彼女の家の電話番号も、今となっては断片的な記憶しか残っておらず、再び車に乗り込みエンジンを掛けると、
どこに住んでいるのか? 
そして電話番号も分からない事で真子との接点は完全に閉ざされたと思った。

「もういい、姿が確認できたところで話すつもりもないんだから」と
自分に言い聞かせながら、アクセルを強く踏み
「あんな女どこで何してようがオレには関係ない」と
アルパインのボリュームを全開にして家までの道のりを飛ばした。

だけど家に帰るとすっきりしない想いだけが膨らんでゆき、
「何故今さら真子の事を気にするんだ!」と自分に怒り散らしていた。

やり場のない怒りを抱えながらこの日は一晩中クールスのナンバーを聴き、
オレってやっぱりダメな男だなと思った。

初恋の相手って誰もがこんなに引きずっているものなのか・・・

いやそんな事はないな、オレが単に女々しいだけだ。
他のヤツ等はみんな過ぎ去った過去の出来事と自分の中で消化し、
次のステップへと走り出しているに違いない。

裏切られ傷付けられた過去の交際相手を愛しく思うこのオレがバカなだけなんだと、
情けない気持ちでいっぱいだった。

次の日から恥を承知で昔の仲間達に連絡を取った。

男としてのプライドとか面子もなにも全て脱ぎ捨てて、

「真子と逢いたいんだけど・・・」とか

「真子が今どうしてるか知ってる?」と電話をかけまくった。
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