過去の贖罪
三十分ほどその場で考えてみたが、結局結論は出なかった。足がだんだん痺れてきた。
あーもう、仕方がない、適当に決めよう。よく考えたら今はどの国、地域の観光スポットもテレビでやってるもんな。それを見るだけで充分その土地に行った気になってるし、こないだも世界遺産の特集を毎日やってたしな。
その番組をみるたび、うあピラミッドだ、エアーズロックだといって胸を高揚させていた、子供の頃を思い出す。あの時と比べて、今は何を見ても感動が沸かない。それだけ大人になったてことか。
一ページの山梨の全体マップを見て、僕は静かに目を閉じた。
たしかバラエティでやっていたよな、えーとなんだっけ::そうそう「ダーツの旅」だ。自分が指差したところに強制的に行こう。そうでもしなきゃ一晩たっても決められない。
僕はぐるぐる指を回し、一瞬呼吸を止め、ミサイルボタンを押すぐらいの覚悟でびっと本に押し当てた。そしてゆっくり目を開け、おそるおそる指のあとをたどった。人差し指の爪の辺りに黒い山が写っている。
「なんでまた富士山なんだよ!」もう一回やろうか。
足がまた痺れ始めた。
もう疲れた、ここにしよう。近くに河口湖があるし、ついでに近くであの雄大な山を見てやろう。
観念して情報誌を持ってふらふらとレジに向かった。もう後戻りはできないぞ、僕はゆううつと闘いながら、本屋を後にした。
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