過去の贖罪
寮のアパートに戻ると、明日の仕事の身支度を済ませ、今日は早めの床に就いた。目がさえて眠れない。隣からは先輩の、三十半ばを過ぎて今まで彼女がいない杉本さんが、テレビを見ているのだろうか、笑い声が聞こえてきた。彼も周りからこき使われている。彼は僕の十年後だ。たぶん同じ路線を一生歩くことになるだろう。そんな悲しみを頭に浮かべては振り切る。流れで生きている、僕の人生は::
また始まった、僕のマイナス人生想像が。
医療の現場や警察とか、生命に係わる人達に比べれば大したことじゃあないだろうけど、今年だけで五人も辞めていってる。正直自分はその人達に憧れていた。
まあ、ここの寮が電気、水道代がただで、家賃もただなのは助かるけど。きっと僕みたいな自由人で気ままなほうが、こういう会社には向いているんだろうな。
そんなことを考えているうちに、電車の音が眠りを誘い、暗い底に落ちていった。いつしか夢を見るのも恐れていた。
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