天井に星空
手の中のロウソクに目を落とし、もう一度星空を見上げた。

よく見たら星空は高く、“僕似”はすぐ近くの天井の壁紙を
くるっと丸めて顔を出していた。

「お前、天井から顔をだしてるけどそこから出られないのか?」

「ああ、僕は天井の住人だから。お前こそこっちの世界にはこられないのか?」

「うーん・・・行けないなたぶん。天井に?行けないなぁ」

僕は少し弱気に答えた。すると呆れた口調で、
「その前に、ふつーさ、何で天井に住んでるのかとか聞くよな。」

僕ははっとして、
「あ、そうそうなんで天井に住んでるの?落ちないのか?何年くらい住んでるんだ?ずっと僕を見てたのか?」

「あーうるさい。これだから一般人って嫌なんだよ」

僕と“僕似”の話はつまらなく終わってしまった。

「くるっ、ひらり」

いきなり“僕似”が天井から落ちてきた。

「俺はあんたの心の中に住むもう一人のあんた。よろしくな」

僕は差し出された手に慌てて手を重ねた。
その手の冷たいこと、僕は大丈夫かってマッサージしてやった。

ずっと僕を見守ってきたらしく、もう一人の心の僕はぺらぺらと話し続けた。

失恋した時に負った心の傷は完治したとか、髪型はしばらく変えないほうがよさそうだとか、内臓脂肪が気になるならジャンクフードになぜ手を出すんだとか。
うるさい姑ってこんな感じか?とか思いながら、でも自分のことだから逆らわずにずっと聞いていたんだ。

どれくらい話していたのかな。
相変わらず僕らの頭上には満天の星空。
(きれい)
僕の心の声は、目の前にいるもう一人の僕が声に出した。

綺麗なのは星だけではなく、僕らを照らす優しいあのロウソクの炎もだった。
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