指切りげんまん
涙と感情が絡んでうまく言葉が出てこない。

困ったように笑って彼は左小指を差し出した。


「…次に逢った時、また殴りあいしながら一緒にいような」

だから、約束をしよう。

涙で前が見えないが、なんとか彼の小指に自分の小指を絡ませた。

「指切りげんまん…嘘ついたら針千本飲ーます

…指切った!」

絡んだ指が解けて暖かさも失せた。


「またね、奏」

「うん…
また、ね…?」

別れの言葉は言わないよ。

嬉しそうに笑うと彼は闇の中に消えて行った。



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