another contract
‥‥私はどうしたい?
紅さんのところに行きたい?
行くなら、人生を掛ける程の覚悟が必要。
そこまでしなければならないその理由は分からない。
分からないのに、そこまで覚悟しないといけないなんて‥。
でも、さっきお爺さんは言った。
『紅が命と引き換えにした』
って。
なら‥‥
「お爺さん、私、行きます」
「‥‥そうか」
「紅さんが私の為に何をしてくれたか、詳しい事は分かりません」
“契約”した。
って言っていたけど、“契約”が何なのかも分からない。
「でも、紅さんは‥‥命を賭けたんですよね?」
「‥そう、じゃの」
「なら、私はそれに答えたいんです」
「辛い事になるかもしれんぞ?」
辛い事‥‥。
“餌”になる事より、辛い事なんてある?
同じ場所にずっと束縛される事より、辛い事なんてある?
「いいです、辛い事には慣れてますし」
「この屋敷の者は皆、今は息子の大広間で集会をしている。いいか、屋敷の者に見つかってはならんぞ」
「どうしてですか?」
「お前は、この屋敷の出入りを永久に禁止されておる」
「‥え?」
「ましてや、紅に会う事もじゃ」
ど、どうして?
「“契約”したのだからな」
おじいさんは、はぁと大きく息を吐いた。
「‥行きなさい」
「は、はいっ」
おじいさんを横目で見送って、私は駆け出した。
おじいさんの言っていた事からして、紅さんに何かあったに違いない。
紅さんは私に沢山良くしてくれた。
だから私に出来る事があるのなら、してあげたい。
「‥あ」
目の前に、三人の男の人。
そのうちの一人は‥‥葵さん?
「おかしいと思うんだけど」
おかしい‥?
私はとっさに草陰に隠れて、その会話に耳を澄ませた。