another contract
「ほら、早く手当てしないとッ!」

そういいながらゴソゴソと薬箱の中身を探った。
消毒液に、ガーゼに包帯、ばんそこう。

「ちょ、お前そんなに慌てな‥ってイテッ!!」
「え?あ、ご、ごご、ゴメンなさい」
「あ~いやいや、お前は悪くねぇ。その消毒液が悪いんだよ」

紅さんは、イテテっ!と笑いながら言った。

「ねぇ、紅さん‥」
「‥もう一つ、約束作らねぇとな」
「え?」
「『さん』付けは止めろ」
「で、でも‥っ」
「あん時は『さん』付けしなかったのに、今更言えねぇっていうのかよ‥」

紅さんは、プイッとそっぽを向いて言った。
不機嫌な子供の様に。
『あの時』というのは、おそらく私が紅さんに血を飲むように言った事だろう。
今になって、その恥ずかしさが出てくる。

「‥え、ええっと‥、いい、の?」
「俺がいいって言ってんだからいいんだよ」
「‥うん、‥分かった」

私はなんだか嬉しくなって、紅に寄り添った。
紅は一瞬困った顔をしたけれど、私を受け入れてくれた。

あのね、紅に言いたい事があるんだよ?
だからここに来た。

「紅‥‥好き」

ここで再開した時、もう紅にはこの言葉をいう事は無理かもって思った。
紅の姿をみて、縁起の悪い事ばかりがずっと頭の中を占領してて。
でも、今はこうやって言える。
だから例え受け入れて貰えないとしても、伝えておきたい。

「紅が私の事をどう思っているか分からない。でも‥、好きなの」

真剣に言ったら、紅は一つため息を吐いた。

「お前、バカじゃねぇの」

吐き捨てる様にして言い、紅は軽く睨むような視線を私に送った。
ああ、やっぱり言うんじゃなかったかも。
そう後悔した。

「‥‥命を賭けてまで、俺がお前を守ろうとしたのは何でだ?」
「え?」

それは、私に同情したから‥‥



「桃が、お前が好きだからだよ」



やっぱり、そうくるよね。
って‥‥


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