another contract

「俺、此処を出て行く」
「‥‥お前が生きている事は屋敷中の皆が既に知っておる。出て行かなくてもいいんだぞ」

もう手を出すなと言っているのだから。

でも、此処にいたら‥桃が此処に来る度に思い出すと思うんだ。
昨日の出来事を。

「いや、出て行く。ここを継ぐ奴は、俺以外にもいるじゃねぇか。偉い幹部の吸血鬼とかよ‥」
「‥‥」
「まぁ、たまにちょこっと顔出すから。それにこの街にいるんだぜ?会おうと思えばいつでも会えるじゃねぇか」
「‥‥分かった」

俺は親父に背を向けた。
親父も俺に背を向けて、歩き出した。



本当は最初から親父は俺を殺す気なんか無かったんだろ?



その証拠に、葵が来た。
爺ちゃんはなかなか人を動かしたりなんてしねぇ。
どちらかといえば、自分で行動するタイプだ。
てか、それ以前に葵の連絡先を爺ちゃんは知らねぇ。
そして葵はというと桃をまんまと此処に導いた。
2人とも、全部親父から聞いていたんだろ。
上手い芝居しやがって。
俺をあそこに閉じ込めたのは、誰の手にも届かないようにする為だろう。
そうしなければ、結構喧嘩とかして恨みを買っている俺は、殺られるからな。
でも逆に下の方のやつら2人が、俺を殺りに来たけど‥。



「こ、紅‥ッ!!」

離れに帰ると、桃は焦った表情で俺に駆け寄って来た。

「何処に行ってたの‥ッ?大丈夫!?怪我無い!?」

そう言いながら桃は俺の体をぐるりと回って確認。
‥おいおい‥。

「ああ、ちょっとな。んな心配しなくても大丈夫だぜ?」
「でも‥‥」
「な?」

ニカッと笑って見せれば、桃は微笑み返してきてくれた。

俺、大丈夫なんだけれど‥

けれど‥‥

あれ?ちょい待てよ?
勢いに乗って『此処を出る』って言ったのはいいが‥‥
住むトコどうすんだよ、俺っ!!

そう真剣に考える俺に、桃は首を傾げた。

「桃の家で一緒に住めばよいじゃないかのぉ‥‥」
「うおぅ‥ッ!!」
< 45 / 50 >

この作品をシェア

pagetop