Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
中沢さんはクスクス笑っている。

「笑わないでください」

あたしがそう言うと、
「ちょっと、昔を思い出したんだ」
と、中沢さんが言った。

「昔、ですか?」

「妻との関係も、最初はこんなんだったなって思って」

ズキッと、胸が痛んだ。

やっぱり、奥さんを愛しているんだ。

「今の雪ちゃんと芯くんのやりとりを見ていたら、そう思ったよ」

「…ケンカ、ばっかりだったんですか?」

あたしは聞いた。

何かしゃべらないと、泣いてしまいそうで仕方がなかった。

「まあね。

けど今となっては、いい思い出だけど」

そう言う中沢さんの目は、輝いていた。

その目を見ていると、思い知る。

中沢さんは、本当に奥さんを愛しているんだって。

あたしは、その中に入ることができない。

中沢さんと奥さんの間に、入ることができない。

「お互い嫌い同士で、顔を合わせるとケンカばっかりだったのに、それが今じゃ結婚してる」

中沢さんが話すたび、胸がズキズキ痛む。
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