Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
コトンと音がしたので顔をあげて見ると、テーブルのうえにグラスが置いてあった。

「ちょっと強いお酒だけど、平気かな?」

ウイスキーのボトルを開けながら、中沢さんが言った。

「大丈夫です」

あたしは笑って言った。

笑顔を作るのが、つらかった。

氷の入ったグラスに、ウイスキーが入れられる。

あたしが飲んだことないような、強いお酒――忘れようと思った。

芯のこと、忘れようと思った。

あたしの中では、芯は“兄弟”か“友達”の対象なんだ。

芯の告白は、ただの冗談。

そう自分に言い聞かせると、あたしはウイスキーを1口飲んだ。

やっぱり、強い。

1口飲んだだけなのに、めまいを感じた。

「やっぱり、無理だった?」

中沢さんが聞いた。

「大丈夫ですよ。

あたし、お酒全般飲めますから」

そう言って、また1口飲む。

薬を飲んだような感覚が、あたしを襲った。

躰が重くなるような、そんな感じだ。

一瞬だけど、吐き気がした。
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