Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「妊娠、したんだって。

奥さんが」

目を開けて、芯を見る。

驚いたように目を100円玉のように見開いて、あたしを見ていた。

「雪ちゃん、じゃなくて?」

あたしは、うなずく。

「中沢さん、パパになるんだよ?

そんな人のそばに、あたしがいたら、困るでしょ?」

言い返せないと言うように、芯はうつむいた。

「だって、奪っちゃうことになるんだよ?」

1回りほど小さくなった芯の肩が、震えていた。

「生まれてくる子供から、パパを取り上げちゃうことになるんだよ?

そんなの、ダメじゃない…」

最後の部分は、独り言のようになっていた。

「だから、自分から身を引くの?」

芯が言った。

「それが、あたしにできる方法だから。

中沢さんの幸せのためにも、ね」

「じゃあ、どうして、きたの?」

芯が顔をあげた。

あたしは、驚いた。

泣いて、いた。

頬に涙が、筋のように伝っていた。

「俺に中沢さんと別れることを、どうして言いにきたの?」

声を震わせながら、芯が言った。
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