Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「奥さんと…生まれてくる子供のためにも…頑張って欲しいんです…。

幸せになって、欲しいんです…」

独り言なのか、自分でもわからない。

でも、あたしの気持ちだった。

中沢さんには、幸せになって欲しい。

ただそれだけの、気持ち。

部屋には、あたしのすすり泣きする声しか聞こえてなかった。

躰中の水分がなくなってしまうのではないかと思うくらい、あたしは泣いた。

「…わかってたよ」

ポツリと、中沢さんが言った。

あたしはすすり泣くのをやめ、中沢さんを見た。

「本当は、上手く行かないことくらい、わかってたんだ」

えっ?

「雪ちゃんのことは、大好きだよ。

このまま妻と離婚して、一緒になりたいと思うくらい」

あたしのことを呼び捨てじゃないのは、未練を振り払うためだろう。

呼び捨てで呼んでしまうと、気持ちが離れなくなってしまうから。

だから、あたしのことを初めて出会った時みたいに、“雪ちゃん”って。
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