FAKE‐LAKE
「……ごめんなさい」
 そのままの格好で固まっているニールと目を合わせず、アンジェは小さな声で謝った。
 気まずい沈黙が流れる。
 どうしたんだろう。雰囲気が昔に戻った気がする。最近明るくなってきてたのに。
 アンジェの暗い表情に距離を感じ、ニールは何だか寂しくなった。
「本当に休んでて下さいよ。アンジェさん病気なんだし、絶対無理しちゃいけません」
 そう言って無理に笑い、ニールは荷物を片付け始めた。
 せっかく、仲良くなれそうだったのに。体調が悪いんだろうか。それとも何かあったんだろうか。
 ニールが悶々と考えながら荷物をしまい終えて立ち上がった時、アンジェはソファーに横になって目をつぶっていた。
 青白い顔。街にいれば――いや、依頼主の事がなければすぐにでも医者を呼ぶのに。
 ニールは溜息を一つつき、アンジェのそばに寄った。
「すみません、なんかまだ調子戻らなくて」
 ニールの気配に気づいて目を開けたアンジェは申し訳なさそうに謝る。
「アンジェさん、具合悪かったんすか」
「……少しだけ、です」
 休んでれば大丈夫ですから、と気丈に言うアンジェに、ニールは余計心配になった。
 一人じゃ具合悪くても看病してもらえないもんな。大丈夫なんてアンジェは言うけど、本当は不安だったり寂しかったりするんじゃないだろうか。
 ニールはアンジェが可哀相に思えてならなかった。一体何を考えているのだ、と見知らぬ依頼主に腹がたった。勿論、何か理由があるのだろうけれど。
「あの」
 アンジェはゆっくり体を起こして尋ねた。
「地図は……?」
 あっと声を出し、ニールは戸棚にしまった地図を取りに走る。
「すんません、食材と一緒にしまっちゃいました」
 ニールのうっかりした失敗のおかげで、少しだけアンジェの表情に笑みが戻った。
< 102 / 426 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop