FAKE‐LAKE
 後半部分をやんわりと強調するアンジェに、それはよかったと医師は笑顔を返す。
 一体何を聞きたいんだろう。いつもはあまり話さない人なのに。
 アンジェは上手に貼付けた笑顔の下、医師の穏やかな微笑みをうたぐるように見ていた。
 まだ芽が出ていない、窓辺に二つ並んだ素焼きの鉢に目をやり医師は話題をふってくる。
「新しい植物を植えたの?」
「はい」
「花?」
「いいえ」
「じゃあ樹かな」
「そんなところです」
 アンジェの堅い返答とにこやかな医師の質問が繰り返される。
 ……何かある。
 そう感じたのはアンジェだけではなかった。屋根裏で毛布にもぐっているレイはさらに息をひそめる。
「そういえばアンジェ」
 医師は帰り仕度をしながら何気なく尋ねてきた。
「ここに青い鳥は来なかった?」
 ――沈黙。
 レイの鼓動は早まり、体が震えた。先生という人物が天井板越しにこちらを見ているような気がして、怖くなった。
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