FAKE‐LAKE
「もう大丈夫だよ。先生は帰ったから」
 もごもごとくぐもった声がアンジェに答えた。聞き取れなかったアンジェはもう一度声をかける。
「レイ、もう出てきていいよ」
「ごめん」
 レイももう一度同じ言葉で答えた。
「……しばらく……一人にさせて」
 泣いてはいなかったが、声が震えていた。きっとレイも何か感づいて不安なのだろう。
「食事が出来たら呼ぶね」
 心配そうなアンジェに、うんと小さな声が答える。
 アンジェが下りて行く足音を聞きながら、レイはそろそろと毛布から顔をだした。
 あのお医者さんは絶対何かを知っている。
『篭の中で飼われ、悲しい最期を迎える事になる』
 今も博士が僕を捜している事を知っている。博士が僕をどうするつもりかも、きっと。
『君も同じ道をたどる事になる』
 それはつまり、僕がここにいたらアンジェを巻き添えにするという事。アンジェは何の関係も無いのに。
「……どうしたら、いいのかな」
 天窓から見える空は青空。本当に青い鳥になって、どこか遠くに逃げられたらいいのに。
 明るい陽射しに手をかざす。気づけばまた、少しずつ痺れ始めていた。
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