FAKE‐LAKE
車には乗らず早足で歩いて行くセティの後ろを、気づかれない距離を保ちながらつけていく。

セティは一体何の仕事をしているんだろう。

アツキは探偵になった気分で、最初のうちは尾行を楽しんでいた。

しかし、セティが町外れの道に入り、そのさきにある立入禁止の札がかかった鉄格子をくぐり抜けていくのを見て、アツキの表情が変わった。

「嘘、だろ……?」

木々に隠された隙間から遠くに見える、冷たい灰色をした古い建物。

アツキにとって最もおぞましい場所。

「……F基地」

疑いが心の中に黒く広がっていく。気づけば拳を固く握りしめていた。

「まさかあいつ……」

身を翻して来た道を戻って行くアツキの頭は混乱していた。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「長々と待たせてすまなかったな」

博士はファイルを開きながらセティに笑いかけた。心なしか表情が明るい。

「とんでもありません。今まで見せて頂いた資料だけでも貴重な経験です。感謝しております」

セティは深く頭を下げて礼を言った。


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