FAKE‐LAKE
その時の事を思い出しているのか、レイの表情が暗い影を帯びた。

自分を“物”扱いする人間ばかりに囲まれた生活。誰も守ってはくれず、誰からも愛してはもらえない日々。

よく気が狂わなかったなとアンジェは思う。自分だったらきっとおかしくなっている。

『必ず湖の国に帰れるって――』

その、故郷の微かな記憶だけがレイの命を繋いでいたのだと思うといたたまれない気持ちになった。

「でも」

レイの瞳に明るさが戻る。

「でも、アンジェに会って兄さんが出来て。ニールに会って人を信じてみようかなって思えるようになって。生きててよかったって、今、心から言えるよ」


僕は今、最高に幸せなんだ。


過ぎ去る時の一瞬を切り取って残す写真の様に、その時のレイの笑顔はアンジェの記憶に深く深く焼き付いた。


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