FAKE‐LAKE
「恋は女性を綺麗にするって本当だな」

「え、やだ、なんで知ってるの?」

アツキが喋ったのね、とリーナは頬を染めて恥ずかしそうに俯く。照れながらも幸せそうな彼女の表情が、記憶の中の遠い恋人と被った。

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

足早に出ていくセティの後ろ姿を見つめ、リーナは不安そうな溜息をついた。

「顔色悪いなぁ、叔父さん」




同じ頃、アツキは部屋の窓に座り外の景色を眺めていた。

「おっ、セトナ先生お出かけのご様子」

少し伸びた栗色の髪を煽る風が冷たいのか、上着の衿を立てて歩いていく。

その後ろ姿を見ていたら、ふといたずら心が沸き上がってきた。

アツキはセティの姿が門の向こうに消えたのを確認し、壁にかかっている黒い上着を掴んで部屋の窓から外に出る。

別に仕事の邪魔をする気も、セティの生活に首を突っ込む気もない。

ただ、謎に包まれている彼の一面をほんの少しだけ覗いてみたい。この間、キスを盗み見されたお返し。

そんな軽い気持ちだった。


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