FAKE‐LAKE
「レイ」
 診察に来たシアナは倒れているレイにそっと手を触れて声をかけた。
 レイの目がうっすらと開き、シアナを見上げる。自力では体を起こす事すら出来ない程レイは衰弱していた。
「これを。痛み止めだ」
 ゆっくり抱き起こし、小さな瓶に入った薬を口元に持って行く。レイは口を堅く結んだ。
「ほら、早く」
「い、や」
 レイは精一杯顔を背ける。嫌だ。変な薬を飲まされて実験された時の事を思い出す。
 それでも薬を飲ませようとするシアナを睨みつけたレイは、彼の目に涙が滲んでいる事に気づいた。
「頼む、飲んでくれ。俺に出来るのはこれくらいしかないんだ」
 レイはしばらく怪訝そうに睨んでいたが、シアナの真剣な表情を見て口を開けた。
 どちらにせよ死は近いのだ。それなら、最期まで人を信じてみよう。
 こくりとレイの喉が動くのを確認し、シアナはほっと息をついた。
「少ししたら効いてくる。多少痛みが和らいで眠くなるだろうから、眠れるだけ眠れ」
 レイは小さく頷く。シアナは床に彼を寝かせ頬をそっと撫でた。
「ごめんな……こんな事しかできなくて」
 レイはゆっくり瞬きをし、謝るシアナを見上げた。優しい、でもどこか悲しげな眼差し。
 この人を、信じよう。掠れた声で気持ちを伝える。
「あり……が、と」
 シアナの表情が固まった。記憶の中、また声が聞こえる。
『ありがと……父さん』
 目をつぶったレイにそっと自分の上着を掛けてやる。隣に座って頭を撫でた。


 数年前。
 街医者として働いていたシアナは妻と息子と幸せに暮らしていた。
 シアナの技術はロスタナでも屈指の物で、他の街からも患者が来るほどだった。
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