FAKE‐LAKE
「アツキ」
 ペンキの剥がれかけたドアを強くノックすると、しばらく間があって寝ぼけた顔のアツキがドアを開けた。
「……なんだセティか」
「すまんな、リーナじゃなくて」
 セティの冗談を軽く笑い、アツキは彼を部屋に通した。
「……掃除しろよ」
 服やら何やらが散乱して足の踏み場もない床を見てセティは苦笑いする。
「掃除中の嵐なんだ。ほっとけ」
 どうやら掃除しようとしてさらに散らかしたらしい。
「慣れない事をしようとするからだ」
「見るなよ。目をつぶれば綺麗に見えるだろ」
 無茶苦茶を言うアツキに思わず吹き出す。
「で? 忙しいはずのセティ先生がこんな辺鄙な所に何の用?」
 ベッドの上に胡座をかいてアツキは聞いた。セティが自分の部屋に来ること自体珍しい。
「ああ、そうだ。真面目な話をしに来たんだった。あまりの嵐のすごさに忘れる所だった」
「ったく、厭味かよ」
 アツキは笑いながらセティの座る場所を確保する。乱暴に服を払いのけただけだが。
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