FAKE‐LAKE
「じゃ次来るのは来週になるけど、アンジェ気をつけろよ」

「うん。ニールも気をつけて」

外に出るなと言われたアンジェは窓からニールを見送る。

「スパイ、か……」

ニールが見えなくなった時、アンジェはぽつりと呟いた。

『依頼人の兄ちゃんが言うには、相当酷い目に遭わされてるんじゃないかって』

ぐっと拳を握りしめる。外は淡い灰色の雲に覆われた冬の空。

「博士の居場所さえ分かれば……」

左手を見つめる。蒼い火に似た怒りがアンジェの心の中に小さく燃えはじめた。


『弾くだけだ。ほら』

博士が“テスト”を始めた日の事を思い出す。冷たい灰色の牢の中、鉄片を渡され的を指さされた。

『あの真ん中を狙え』

人の形をした板。真ん中に黒い印。そこを撃てば人がどうなるかは、幼いアンジェでも理解出来た。

怖い。

手が震え、鉄片は板の足元に当たる。的を外した。

「ひっ……!」

博士は壁に掛かっている鞭を手にしアンジェを打った。泣きだすとさらに打たれる。

『いちいち泣くな。叩かれたくないなら真剣にやれ』

外す。打たれる。少し外す。打たれる。

『次外したらどうなるか分かってるんだろうな』

がくがくと恐怖に震えるあごを乱暴に掴んで脅す博士。泣きながら必死で真ん中を狙う。一センチ位外した。

『ごめんなさい……!!』

床に縮こまって謝り続ける四歳の自分を容赦なく打ち叩く博士――

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