FAKE‐LAKE
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「レイ」
 躾係の兵と入れ代わるようにシアナが入って来る。日に日に痩せていく傷だらけの少年は、彼を見て嬉しそうに小さく微笑んだ。
「またひどくやられたな」
 血が滲んだ布をほどき、傷を確かめ手当てする。薬を塗り新しい布を巻く。
「痛むか?」
 レイは素直に頷いた。体中が心臓になったように疼いている。
 シアナは先に水を少し飲ませ、それから痛み止めを飲ませた。
「あ、りがと」
 ほっとしたようにレイは息をついた。シアナがくれる痛み止めはとても苦いけれどよく効く。薬を飲んだ後は短い時間だけれど眠る事が出来、アンジェの家にいたときの楽しい夢を見られる。
 その短い時間は博士と戦うレイの心の支えになっていた。
 シアナはレイの傷ついた細い体をゆっくり起こし、自分の上着で包んで抱き寄せた。
「少し熱があるな。寒いだろ」
 瑠璃色の瞳が優しく彼を覗き込む。腕の中、温もりに包まれてレイはふふ、と微笑んだ。
「何だ」
「お父さん……みた、い」
 ――そうだったら、よかったのに。
 小さく呟き、レイはシアナの胸に寄り掛かって目をつぶった。
「……ごめんな」
 柔らかい水色の髪を、痣だらけの頬を撫でる。
『父さん』
 耳に響く息子の声がレイの声に聞こえた。
『ありがとう』
「助けてやれなくて、ごめんな……」
 シアナは自分の胸にもたれて眠りはじめたレイにそっと謝った。
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