FAKE‐LAKE
『人、怖い』
『博士に追われる夢』
『僕は道具だったから』
『逃げ切れなくて捕まって殴られてそして』
 ぎゅ、と拳を握る。アンジェは薄暗い居間から立ち上がった。
 ニールは、あの記事の記者はわからなかったと言った。でも、その話をした時彼の目が明らかに泳いでいた事をアンジェは見逃していない。
 ニールは嘘がつけない人だ。だからニールがレイの存在をばらしたとは思わない。ただ、彼は何か隠している。
 二階に上り、窓の外を眺めた。紺色の空で輝きを増していく欠け始めたばかりの月が、葉を落とした木々の影を薄く映し出す。
『……私がさらってきた。手なずけるために優しくした』
 アンジェの表情が歪んだ。何度もよみがえるその声は、深く刺さった鋭い刺のように彼の心を痛ませる。
 人とは、そういうものなのだろうか。見えている部分が全て真実とは言えず、口にしている言葉が必ずしも本心とは限らない。
 人の心の表と裏、明と暗。一体何を信じて何を疑えばいいんだ。
 アンジェは窓にぼんやり映った自分を見て言った。
「一度裏切られたのに、どうしてまた人を信じたりしたんだろう」
 バカな奴、と自分を嘲笑う。
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