FAKE‐LAKE
「アンバーさんが来る前に鍵開けとこうと思ったんですけど、寝坊してしまって。すみません」
「何っも問題無いです! 万事OKです!」
 訳の分からないオーバーアクションのニールを見て、林檎を拾いながらアンジェがまた笑う。
 快活とは決して言えないが、穏やかで素直な笑顔。
 こんな弟がいたら可愛いだろうなぁ。うちに居るのはやたら口うるさい、ませた妹ばっかりだしな。
 今度こそ落とさないようにしっかり荷物を抱えてアンジェの家にあがりながら、ニールは心の中で呟いた。

「あ、僕も手伝います」
 いつも通り戸棚を開けて品物をしまおうとしているニールの隣に、アンジェはちょこんと座った。これまた驚きで一瞬固まってしまったニールの表情を見て、遠慮がちに付け加える。
「……お邪魔でなければ」
「お邪魔なんてとんでもない! 大々歓迎です!」
 何が大歓迎なんだよ、とニールは自分で自分に突っ込んだ。こんなだからいつも『オーバーアクション』とか『演劇的だ』とか言われて引かれるんだよな、と自己分析までしてしまう。
 アンジェは動じた風も引いた風も無くにこりと笑い、食材を順序よくしまいはじめた。楽しそうに見える彼の表情に、ニールはこっそり首を傾げる。
 一体どういう風のふきまわしだ? なんか性格明るくなるような物でも食べたんだろうか。
 ニールは思わず部屋にある鉢植えを盗み見た。
 花ばかりだ。
 いやいや、花にそういう効能の物があるのかも知れない。世の中にはハーブといって薬になる花もあるという。草という字を配されているからといって、全てが草だという訳ではないのだ。
 文字の持つ無限の可能性について考え込んでいるニールに、アンジェは最後の荷物を手にして尋ねた。
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