FAKE‐LAKE
「この綺麗な色のとろんとした液体はなんですか?」
ニールは視線を鉢植えからアンジェの持っている細い瓶に移した。
淡い黄金色をしたそれを見た途端、ニールの表情がぱぁっと明るくなる。その綺麗な色の液体こそが、本日の最重要事項だった。
「そいつはですね、蜂蜜です。アカシアの花から取れた奴なんですが、もんのすごく美味いんですよ。体にも良いですし、アンジェさんに食べさせたいと思ってあっしからのプレゼントです!」
一息に説明し、ニールはアンジェの反応を待った。美味しいものを食べたら無表情が治るかと思って――と言う本音は、とりあえず封印しておいた。
アンジェは瓶を光にかざして眩しそうに目を細める。柔らかい日差しがガラス瓶を通り抜け、ゆらゆらと彼の頬を撫でた。
「すごく綺麗な色ですね。初めて見ました」
なぜか色にこだわるアンジェに、ニールは少し肩透かしを食った。蜂蜜は絵の具じゃないんだけど、なんて無言で呟いてみる。
「どうやって食べたらいいんですか」
そう、そこが大事なんだ! と、ニールは自分なりの美味しい食べ方を教えた。
彼の力説を真面目に聞きながら、アンジェは甘い物好きなレイが蜂蜜を喜んで食べる様子を想像していた。
「ニールさんが美味しいって言う物は全部本当に美味しいから、これもすっごく美味しいんでしょうね」
でも勿体ないな、こんなに綺麗なのに、とアンジェは小さく笑う。
ニールは、一方的な自分のトークをいつも無表情に聞いていたアンジェが、以前に話した内容を覚えているという事に猛烈に感動していた。
「もし気に入ったらまた持ってきやすから、いつでも言って下さいね!」
これ以上ない程の笑顔で手を振り、ニールはアンジェの家を後にした。
途中振り返った時、アンジェが窓から自分を見ている事に気づき、両手を大きく振ってみる。左手を小さく振り返すアンジェの姿に、顔が緩むにいいだけ緩んだ。
「少し雰囲気が人間らしくなったかな」
前は人形なんじゃないかと思う位喋らなかったから。半分以上残していた食材も、最近はきちんと食べてるみたいだし、と満足そうに呟く。
なぜアンジェが変わりはじめたのか分からないけど、良い変化には違いない。
少しは自分のマシンガントークも役に立ったのかな。
街までの帰り道を歩くニールの足取りはいつになく軽かった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ニールの姿が見えなくなった事を何度も確認し、アンジェは階段を駆け上がった。
「レイ」
ベッドの上でぐしゃぐしゃになっている毛布がモコモコと動く。
「もういいよ、出て来て」
アンジェが小声で言うと、毛布の下から楽しそうな笑顔のレイが現れた。
「あー、びっくりしたー」
昨日の、夢を見て怯えていたレイを思い出し心配していたのだけれど、笑っている所をみるとニールの訪問はさして怖くなかったようだ。
ほっとして肩の力が抜けたアンジェは、レイの頭がすごい事になっているのに気付く。
「レイ、静電気すごい。爆発してるよ、頭」
ニールは視線を鉢植えからアンジェの持っている細い瓶に移した。
淡い黄金色をしたそれを見た途端、ニールの表情がぱぁっと明るくなる。その綺麗な色の液体こそが、本日の最重要事項だった。
「そいつはですね、蜂蜜です。アカシアの花から取れた奴なんですが、もんのすごく美味いんですよ。体にも良いですし、アンジェさんに食べさせたいと思ってあっしからのプレゼントです!」
一息に説明し、ニールはアンジェの反応を待った。美味しいものを食べたら無表情が治るかと思って――と言う本音は、とりあえず封印しておいた。
アンジェは瓶を光にかざして眩しそうに目を細める。柔らかい日差しがガラス瓶を通り抜け、ゆらゆらと彼の頬を撫でた。
「すごく綺麗な色ですね。初めて見ました」
なぜか色にこだわるアンジェに、ニールは少し肩透かしを食った。蜂蜜は絵の具じゃないんだけど、なんて無言で呟いてみる。
「どうやって食べたらいいんですか」
そう、そこが大事なんだ! と、ニールは自分なりの美味しい食べ方を教えた。
彼の力説を真面目に聞きながら、アンジェは甘い物好きなレイが蜂蜜を喜んで食べる様子を想像していた。
「ニールさんが美味しいって言う物は全部本当に美味しいから、これもすっごく美味しいんでしょうね」
でも勿体ないな、こんなに綺麗なのに、とアンジェは小さく笑う。
ニールは、一方的な自分のトークをいつも無表情に聞いていたアンジェが、以前に話した内容を覚えているという事に猛烈に感動していた。
「もし気に入ったらまた持ってきやすから、いつでも言って下さいね!」
これ以上ない程の笑顔で手を振り、ニールはアンジェの家を後にした。
途中振り返った時、アンジェが窓から自分を見ている事に気づき、両手を大きく振ってみる。左手を小さく振り返すアンジェの姿に、顔が緩むにいいだけ緩んだ。
「少し雰囲気が人間らしくなったかな」
前は人形なんじゃないかと思う位喋らなかったから。半分以上残していた食材も、最近はきちんと食べてるみたいだし、と満足そうに呟く。
なぜアンジェが変わりはじめたのか分からないけど、良い変化には違いない。
少しは自分のマシンガントークも役に立ったのかな。
街までの帰り道を歩くニールの足取りはいつになく軽かった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ニールの姿が見えなくなった事を何度も確認し、アンジェは階段を駆け上がった。
「レイ」
ベッドの上でぐしゃぐしゃになっている毛布がモコモコと動く。
「もういいよ、出て来て」
アンジェが小声で言うと、毛布の下から楽しそうな笑顔のレイが現れた。
「あー、びっくりしたー」
昨日の、夢を見て怯えていたレイを思い出し心配していたのだけれど、笑っている所をみるとニールの訪問はさして怖くなかったようだ。
ほっとして肩の力が抜けたアンジェは、レイの頭がすごい事になっているのに気付く。
「レイ、静電気すごい。爆発してるよ、頭」