FAKE‐LAKE
報告に行く時間がきても、シアナはまだレイのそばにいた。

腕の中の小さな温もりが、眠らせていた記憶を、捨てたはずの感情を呼び覚ます。

誰かを助けたいという真剣な願い。

そのために選んだ医師という職への思い。

無力さを思い知った家族の死。

誰かを愛おしく思う温かな気持ち。

「……どうしたんだ、俺は」

シアナは自嘲するように笑った。何も感じずに生きる方が楽なはずなのに。そう生きてきたはずなのに。

何故、レイの姿を見て胸が痛むのだろう。

何故痛みを止めてやりたいと、そばにいてやりたいと、一瞬でも笑顔にしてやりたいと思ってしまうのだろう。

「……ジェ」

レイの口が微かに動いた。どうやら夢を見ているらしい。

幸せそうなレイの表情にシアナは思わず微笑んだ。



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