FAKE‐LAKE
「お、おじさん?」

「すまない。すまない、アンジェ……」

「どうしたの、おじさん」

驚くアンジェに教授はただ謝り続けた。

幼いアンジェの人生を狂わせた揚句、親代わりにすらなってやれない事を。



食事に混ぜた睡眠薬が効いてぐっすり眠っているアンジェを診察台に寝かせる。

可愛い寝顔を見るのも今日が最後だ。柔らかい頬をそっと撫でる。

「アンジェ、ごめんな……」

明日使われる予定だった薬を量を減らしてアンジェに投与した。

記憶を失わせる薬。今までの事を忘れさせるために。博士の事も、左腕の事も、自分の事も。

そして左腕に軽い麻酔をかけて“印”を削り取った。

しばらくして薬が効きはじめ、高熱と痛みに苦しむアンジェを見ていられず、教授は部屋を出ようとした。

その時。

「たすけ、て」

アンジェが虚ろな瞳で自分を見ているのに気づいた。

「くるし、の」

教授に手を伸ばし、朦朧としながら助けを求めるアンジェ。教授は駆け戻り、その手を握った。


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