FAKE‐LAKE
出来れば言い合いはしたくない。なのにセティは言葉を止めてくれない。

「官僚や資産家を不安にさせれば、お前の兄貴は帰ってくるのか? 泥棒のお前を見て兄さんは喜ぶと思うのか?」

「うるさい!!」

ガシャン、と本棚のガラス戸が派手な音を立てて砕け散る。

一番触れられたくない所に入り込んでくるセティに、アツキは感情を爆発させた。

「あんたに何が分かるんだよ!!」

ガラスを殴った左手に血が伝う。

「そうさ、俺が泥棒なのは金のためじゃない、復讐のためさ。何も手にしてなけりゃ幸せでもない」

でも、と続けるアツキの怒りは悲しみの反動だとセティは知っていた。だからこそ盗みをやめさせたいのだ。

「あいつらは俺から兄貴を奪った。これ以上にない程残酷に兄貴を殺した。金と不安で済んでる事を有り難く思って欲しいくらいだ」

握った拳から落ちる赤い血は、まるでアツキの心から流れているように見えた。幼い時に負ったその傷は今なお癒えていない。


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