FAKE‐LAKE
「大人しくて、素直で。このままいけばこの子はコントロールしやすい……使いやすい兵器になるだろう」
 ただ、と続けるおじさん――教授の声は涙で濡れていた。
「この子が……アンジェが私を信じてくれて慕ってくれて……兵器として扱う事に耐えられなくなって……」
「つまり情が移った、と言う事ですか」
 冷たく聞こえる青年の問いを、教授は震える声で肯定した。
「それでいいんですよ。教授の本心を聞けて安心しました」
 セトナと呼ばれた若い男性は少し声を和らげた。
「アンジェの事はご心配無く。彼の病気の事も腕の事も、全て把握しています。教授も早くここを出た方が良いかと」
 ああ、と教授は頷き、アンジェの頭をそっと撫でた。
「さよなら……アンジェ」
 ――おじさんの声が歪む。
 二人の会話が頭の中でぐにゃぐにゃに歪んでいく。
 記憶が歪み、奥深くに閉じ込められる。

 後に残ったのは、記憶を無くし、他人にも自分にも関心を持てなくなった、五歳になったばかりの自分――
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