喫茶ノムラへいらっしゃい!
「せんぱーい、待ってくださいよー。」

井上が走ってやって来て、私の隣に並ぶ。

私は、歩くスピードを変えずにどんどん進む。

「先輩、なんか怒ってます?」

「別に。」

それだけしか答えない。

言ってもどうせわかんないでしょ。

「俺、何かしたかなぁ。」

ほらね、やっぱり何にもわかってない。

私は、井上が理解できるほど単純じゃないんだから。

「だから、何でもないって。気にしなくていいから。」

少し優しく言って、井上の顔を見上げる。

「そうですか?じゃあ、いいけど。」

井上の目が不安そうに私を見つめる。

なぜか、一瞬かわいい、と思ってしまった自分に腹が立った。

井上の目を見ていられなくて、私は目をそらす。

「さっ、行くよ。」

いつの間にか、喫茶ノムラの前に着いていた。
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