君を呼ぶ声

「きっと、貴方にだって、幸せになる資格があるんです」

僕の言葉に、彼女は涙を流して喜んでいた。

分厚いマニュアルに載っていた言葉。

全部覚えている僕は、そこから相手に合った、ぴったりの言葉を探す。

感情のこもっていない、淡々とした口調で言い放つ。

「ありがとう」

僕は、思わず目を見開いた。

「私、きっと誰かにそう言ってもらいたかったんだ」



……なんだ、これ。

彼女は、感動してくれているらしい。

僕にとってはうれしいのだけれど。

違和感がある。

こんな言葉、なんの意味があるんだ。


僕はまだ、この「仕事」になじめずにいた。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop