黄昏に君と


オレは少し後ずさりした。


「お前…「ヒトだー――っ!!」


妖か、という問いは発せられることなく、妖の声によってさえぎられた。

そして、あろうことかその妖は、オレにいきなり飛びついてきたのだ。


「……っ!?」


もちろん負傷した足がその勢いを支えることはできるはずも無く、そのまま2人仲良く転倒してしまった。

下が茂みだったおかげで、強く打ち付けた腰はあまり痛みを感じなかった。
だが、首がぐき、といやな音をたてた気がする。



妖はといえば、そんなオレの様子に気にかける様子も無く、大泣きしていた。

まるで、生き別れの兄と再会した、とでもいうように。





思考というものは、あまりに突飛なことが起きると停止してしまうようだ。

オレはしばらく呆然とその様子を眺めていた。




頭が混乱していたせいで一時は麻痺していた足首の痛みも、徐々に鮮明になってきた。

痛みと共に戻ってきた現実感が、早く帰らなければ、とオレを急かす。





「………っ。」



立ち上がろうと足に力を入れたが、思うようにいかなかった。

もしかしたら、さっきのでさらに悪化したのかもしれない。
…誰かさんのおかげで。









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