黄昏に君と




「暗くて何も見えねぇ…。」



あの池から離れたはいいが、辺りはもう真っ暗になっていて、1m先を見るのも困難になっていた。
当然、後ろを振り返っても、そこには変わらず闇が存在しているだけだった。






見知らぬ場所に、独り。




不安と焦燥を抱いた風が、オレを撫でていく。






オレはそれを振り払い、前に向き直った。
…とりあえず、灯りが見えるところに出るまで歩いてみるしかないだろう。



また歩き始めようとした、その時。
視界の端に、小さな光が見えた。



「街灯か……?」



いや、違う。


その小さな光は、まるで『自分に気づいてくれ』とでもいうように、同じところをふわふわと浮遊していた。

そしてこの光は、過去に何回か見たことがあった。




「蛍……!?」




オレのその言葉が合図だったかのように、いくつもの光が姿を現し始めた。


昔、両親に連れられて見た蛍。そのときの光景と、一致していた。

だが、そんなはずが無い。


     ・ ・
今は、真冬なのだ。







< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

夜と私と月光少年 【短編】

総文字数/238

恋愛(その他)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「私は何故ここにいるの?」 「それを知るためにここにいるんだ。」 * - * - * 夜と私と月光少年

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop