黄昏に君と
「暗くて何も見えねぇ…。」
あの池から離れたはいいが、辺りはもう真っ暗になっていて、1m先を見るのも困難になっていた。
当然、後ろを振り返っても、そこには変わらず闇が存在しているだけだった。
見知らぬ場所に、独り。
不安と焦燥を抱いた風が、オレを撫でていく。
オレはそれを振り払い、前に向き直った。
…とりあえず、灯りが見えるところに出るまで歩いてみるしかないだろう。
また歩き始めようとした、その時。
視界の端に、小さな光が見えた。
「街灯か……?」
いや、違う。
その小さな光は、まるで『自分に気づいてくれ』とでもいうように、同じところをふわふわと浮遊していた。
そしてこの光は、過去に何回か見たことがあった。
「蛍……!?」
オレのその言葉が合図だったかのように、いくつもの光が姿を現し始めた。
昔、両親に連れられて見た蛍。そのときの光景と、一致していた。
だが、そんなはずが無い。
・ ・
今は、真冬なのだ。
