時間屋
「…私ね、この能力に気づいたのが、小学生の時なの。お父さんや…財閥の人はみんな、喜んでた。財閥の未来がわかるんだもの」
「わかったって、どうするんだ?未来は変えられないだろ」
未来はこうでした、はいそーですか、で終わるもんじゃないのか?
もしその未来が最悪だったら、そーですかどころじゃないが。
未来なんか、視ないほうがいい。
志乃は、悲しそうに笑った。
「視えるんだ、私。何パターンもの…未来が」
俺が何か言う前に、志乃は続ける。
「これを選んだら、この先の未来はこうなる。そうやって、まるでゲームみたいに、頭の中で映像が創られるの」
それが、どんな感じなのかは俺には分からない。
ただ、財閥にとっては、最高の能力なんだろう。
志乃の言っていることが本当だったら、彼女に未来を視てもらえば、一番良い選択肢を選んで行動出来る。
常に、良い状態が保てるってわけだ。
…そんな能力があることが耳に入れば、誰だって欲しがるだろう。