時間屋

……ただ。


「…確かに便利かもしれないけどさ、何かヤだな、その能力」


俺がそう言うと、志乃は伏せていた顔をパッと上げた。


「…そうなの!私は嫌いなの!視たくもない未来が、視えちゃうことだってあるから!」


「あー、わかったから。声のトーン下げろ。デカいぞ」


「わ、ごめん」


俺が顔をしかめると、志乃は恥ずかしそうに謝った。


本当に、全然大人しくない。


逆にうるさい。


「…なんか、同じ気持ちなのが嬉しくて。私の周りの人は、みんなこの能力が羨ましいって言うから」


志乃は、天井を仰いだ。


「お父さんはね、私じゃなくて、この能力を護りたいんだよ。この能力が大切なの。…それが、すごく悔しい」


その切ない表情を見て、何故だか俺は、昔の自分を思い出した。


けど、すぐに頭から無理やり消し去り、口を開く。


「…言えばいいじゃん」


「え?」


「嫌なら、言えばいいんだ。"能力じゃなくて私を見て"って」



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