時間屋
どっと疲れた俺は、ため息を吐く。
「…とりあえず、無事で良かった。早く部屋入るぞ」
志乃は話を流されたことにカチンときたのか、ふてくされた表情で俺の後に続いた。
本当にこのとき、俺は疲れきっていた。
…だから、少し離れた曲がり角から、俺たちをじっと見ている人物がいたことに。
―――気づかなかったんだ。
地下へ下り、志乃の部屋の前で立ち止まる。
「俺はまた、扉の外にいるから」
「…だめ!」
………だめ?
俺は眉をひそめた。
「あ―…、わかった。じゃあ階段の上の方に…」
「違うの!…何か、話さない?」
何故か必死そうに話す志乃の姿に、俺は疑問を抱きながらも頷いた。
「…まぁ…いいけど」
途端に、志乃は顔を輝かせた。
「本当!? じゃあ、入って入って!」
志乃の部屋に入り、昨日と同じ椅子に座った俺は、頬杖をついて問いかける。
「何かって、何話すわけ?」
「んーとね、時間屋さんのこと!!」