音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




――― チャポン。

温かいお湯に入り考える。


“関係無い―――” って言った時のいっくん……。

とても、傷ついたような顔をしていたな。

いっくんはただ、あたしを心配してくれたっていうのに……。

それに、あたしだっていっくんを傷つけたかった訳ではない。

ただ…… 言いたくなかっただけ。

これは、わがままだってわかっている。

わかっているけど…… いっくんだけには、どうしても知られたくなかった。


――― あたしの考えっていけないこと?


それに、いっくんに自分の弱った姿を見られたくなかった。

いっくんに弱った姿をみせるなんて…… 恥ずかしい。

どうしても、いっくんにはあたしの元気な姿だけを知っていて欲しいと思った。

普段から、それほど仲が良いってわけじゃないけど、時々、会ったりすると口うるさくなる。

でも、普段から言葉を交わさなくたって、いっくんはあたしを心配しているってわかっているから、そんなに嫌な気持ちにはならない。

そんな、口うるさいいっくんだからこそ……。

こんな弱っている姿を見せたくないんだ。


さすがに、喘息と難聴なら、難聴の方がいっくん的に心配要素が大きくなると思う。

いっくんがあたしばかりに構うことを、よく思わない女子だって出てくるはずだし……。


お風呂ではグルグルいっくんとのこれからを考えてしまい、逆に良くなかったかも。

今夜は早く寝よう!!

そう思い、あたしはお風呂をあとにする―――。




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