音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




「そうなんだ……」


理央ちゃんは一言だけ言い、顔色ひとつ変えず机に向かった。


もしかして…… 理央ちゃんはいっくんがキライなのかな?

思春期ってやつで突然現れた年上の男の子なんかと、友達にはなれないとか?


「理央ちゃんはいっくん、キライ?」


「キライじゃないよ。 …… どうして?」


不思議そうな顔をして、答えた。


「なんとなく、かな……。 理央ちゃん見ていたら嬉しそうな反応もしないから"キライかな?" って思ったの」


「キライじゃないよ。 まおちゃんの友達だからいい人だって分かるし」


うっわぁー! あたしって理央ちゃんにそんな風に見られていたんだ。

――― 知らなかった。


「勉強、頑張ってね!」


テスト前の理央ちゃんに一言残して、ルンルン気分で部屋を出た。


なんだか"まおちゃんの友達だからいい人だって分かる"って…… あたしが理央ちゃんに信用されているって事だよね?

お姉ちゃんとして見られているって事だよね?


スッゴいうれしい!




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