音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




「これからいっくんを迎えに行ってくる」


「そうなの!! あたしも着いて行く」


「ホント! じゃあ一緒に行こ」


外は暗く、雪も降りだしているから正直1人では行きたくない。 だから理央ちゃんがついてきてくれるならうれしい。


「お待たせ」


理央ちゃんもコートを着て、準備を終えた。


「じゃあ行こっか」


2人で階段を降りて、リビングに顔を出した。


「パパおかえり。 ママは?」


「キッチンにいるけど。

早く樹くんのとこ行ってやれよ。 傘が無いと困るだろ?」


「大丈夫だって。 まだ電車は着かないから」


パパはいっくんが大好き。 だから、いっくんが家に来てくれると、本当に喜ぶ。


「ママー、理央ちゃんも連れていっていい?」


キッチンにいるママに声をかける。


「理央? 理央はダメ、来週はテストがあるんだからカゼ引くわけにはいかないでしょ?」


「あたしもまおちゃんと行きたい!」


「ダメッ!」




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