音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
ふふーん。
こうやって優ちゃんと向き合うのって久しぶり。


たった数日、離れていただけなのに……


何ヵ月も離れていた気分。



「何よ、人の顔見てニヤニヤしないでよっ」


「してないよーだっ」


あたしは机を挟んで頭側。
優ちゃんは反対の足元の方に座っている。


優ちゃんが目の前にいるのが嬉しくてストローを唇に当てているだけでだけで中身は一向に減らない。



「そう言えば……樹、まおちゃんに“あれ”渡したか?」


「あぁ、まだだったわ」



『あれ』って何?
何かあたしに関係あるものなんだよね。


授業で使ったプリントかな?


いっくんはカバンをガサガサしてビニール袋を取り出した。


ビニール袋じゃ……
どう考えたって、プリントではないね。



「………これ、なに?」


「俺らからの見舞品。
まおの好きそうなのを選んできた」







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