音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
急げ、急げ~。
もしこのバスを逃したら、遅刻ギリギリになってしまう。


初日っから遅刻は嫌だよ。



「そんな焦らなくたって間に合うだろ?」


「分からないじゃん!」


いっくんはいいよね。
あたしより足が長いから走ったって余裕で教室に着いちゃうもんね。


あたしだっていっくんと同じくらいの長さがあったら走れば余裕だよ。


………… 多分。



「まだ本調子じゃ無いんだろ?
ゆっくり歩け。
そのペースで歩き続けたら放課後まで持たないぞ」


大股でドカドカ歩んでいる。
でも、こうでもしなきゃ間に合いそうに無いんだもん。


遅刻だけはどうしても避けたい。



「まお、安心しろ。
マジで間に合うから、ゆっくり歩け」


「本当に間に合う?」


「あぁ、間に合う。
もうバス停には陽太たちが待っている。
万が一バスが早く着いても停まって待っていてくれるはずだ」







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