音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
停まっていて待っていてくれるはずって……
その根拠が分からない。


でも、今はその言葉を信じよう。



「はぁー、やっとゆっくり歩く気になったか」


「ん、だって間に合うんでしょ?」


「間に合うっつーの。
朝からこっちが疲れた」


それはゴメンね。
ちゃんといっくんの言葉を信じるから今回は許して。


階段を下れば見えてくる懐かしい景色。
バスが世話しなく動き、人は無言で歩みを進め、その中でも一際目立つ存在を発見。



「まおーーー」


「優ちゃーーん」


今朝もバス停であたしを待っていてくれた。
入院期間中に一度会っているけど、やっぱりちょっと違う。


「優ちゃーん、会いたかったよ」


「もー、ずっと寂しかったんだからね」


「優ちゃん、大好きッ」


「ありがとう」



ギューっと優ちゃんに久し振りに抱き着いてあたしからの愛の告白。







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