音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




痛いよ、痛いっ!


キーン、キーン、キーン……。

相変わらず、耳鳴りは続いている。


「静かにして。 近所迷惑でしょ?」


「痛いんだもん」


これはガマンできない。 半端ないくらい痛い。


「高校生になってまで転ぶなんて、小学生みたい」


ちょっと、ちょっと…… 理央ちゃん。 理央ちゃんまで、そんな事言うの?

なんだかいっくんに、似てきた。


「――― はい、終了」


「ありがと」


ヒザはズキズキ痛み、耳鳴り。 ――― そして、めまい。

今のあたしの体は最悪。


理央ちゃんと一緒にママが帰ってくるまで2人で留守番をする。 会話は、理央ちゃんの今日の出来事やあたしの学校の話がほとんど。

そして、ママが帰ってきてから3人で夕ご飯の支度をした。


結局、耳鳴りが止んだのは夕ご飯を食べ終わった頃だった。


3時間……。 こんなにも長時間、鳴り続けていた。




< 59 / 557 >

この作品をシェア

pagetop