笑って、ジョニー

よく晴れた春の日。

よく晴れた春の日だった。ただまだ三月の始めで、水泳に適した季節ではなかった。
なのにジョナサン・・・ジョニーは全身びしょ濡れで、がたがたとふるえていた。
顔は無表情のままなのに、色は真っ青。
そしてその腕には同じくびしょ濡れの、三匹の子猫が抱えられていた。
「またなの・・・?」
ジョニーの持ち主(彼女は『友達』だと言い張るが)のアン・シルバーは、頭をかかえてためいきをついた。
彼女も今年で十七歳。常識も知識も礼儀作法も、ある程度は身につけた。それなのに、なぜこのじぶんの友達は、そのどれひとつとして覚えようとしないのか。
「やさしいのはいいけど、自分のからだのことも考えなよ」
「・・・寒い。けど、温かい」
「どっちよ?」
「猫がいるところは、温かい」
「生きてるものは温かいのよ。お湯沸かしておいたから、子猫といっしょに温まってきて。見てるこっちが寒いから」
「分かった」

小一時間後、アンが子猫にミルクをやっているとジョニーが歩いてきた。
そのままアンのとなりに座る。
「・・・触ってもいい?」
「どうぞ?この猫を助けたのはあなたなんだし」
「え・・・と」
「あ?」
「ありがとう」
「よし」
ジョニーはひざの上で子猫をあやし始めた。無表情のまま顔をほころばせるという高度な技術を駆使しながら、手だけで子猫とじゃれている。


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