other contract

other contract -mark 6- 華目線




「は、華‥」
「‥‥」

いつからそこにいたのか。
という目でこっちを振り向いた金司さん。

いつからって、最初から。

彼が誰かと私の事を話している時から。
だから、私も全部聞いていた。
彼に『ウザい』だとか言われても、感じるものは別になかった。

それは、



私の気持ちが動き始めていたから。



彼を一発殴って、その場から走り去ろうと考えていた時。
金司さんが彼の胸倉を掴んだのが見えた。

だから中途半端な場所に出た状態で、私は足を止めてしまったの。

隠れようと思ったけれど、そう思った時にもう手遅れ。
彼が、私の名前を口にしたから。

「‥金司さん、離してあげて」
「お、おお‥」

離された彼はその場から立ち去ろうと、私の横を通る。
私も私で、気持ちが動いていたから別にいい。
でも、あんたは私の事を『利用』していたのね‥‥。

それで、タダで帰れるなんて

「勘違いしてんじゃないわよっ!!」

ガッという音と共に倒れるその体。

「お、おい!華っ!!」

大体、普通の女の子が手を出すなら平手打ちだろうけど、生憎私は拳で殴るの。
『利用』する子、間違えたわね。

バタバタとその場から走り去る彼。
その後ろ姿を見送りながら、虚しさが心に染みてきた。

「‥‥華」
「べっ、別に私だってアイツの事、そこまで好きじゃなかったし!!」

それに、気持ちは傾いていた。
彼にではなく‥‥

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